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入試問題の拡張

次の問題は有名な京大入試の問題である.

問A:\tan{1^{\circ}}無理数か. 

どこにでも解答が載っているので証明は省く.

ここではこの問題を「改造」することを考える. 

例えば

無理数」→「超越数」としてみる. 

問B:\tan{1^{\circ}}超越数か. 

超越数とは, 有理数\mathbb{Q} 上代数的でない複素数体\mathbb{C}の元のことである.

つまり, 超越数とは「どのような有理数係数の多項式の零点ともならない数」のことをいう. 

無理数とは換言すれば「どのような一次の有理数係数の多項式の零点ともならない数」である. 

したがって, 超越数無理数である.

 

しかしながら(当然)無理数超越数であるとは限らない. 

例えば, 無理数 \sqrt{2}x^2-2 の根なので超越数ではない. 

 

問Bの解答:

\tan{1^{\circ}}超越数ではない. 

なぜならば加法定理を繰り返し適用することで1=\tan{45^{\circ}}= \tan{1^{\circ}} の \mathbb{Z} 係数有理式

となることがわかるからである. (厳密には帰納法を用いて示せばよい. ) □

 

 

\tan{1^{\circ}}」→「\tan{1}」 としてみる. 

問C:\tan{1}無理数か. 

もちろん無理数である. 

このことはマクローリン展開を用いたネイピア数[\tex:e]が無理数であることの証明と同様の手法で証明することができるかもしれないが, \tan{x}マクローリン展開の係数にはベルヌーイ数が表れるなど複雑であるので\sin{1}, \cos{1}に比べると剰余項の評価が難しいと思う.  

以下では大定理を用いて証明することにする. 

問Cの解答:

 \tan{1}超越数である. 特に,  \tan{1}無理数である. 

これを示すには次の定理を用いるのが便利だと思う. 

ネイピア数eとする. \alpha_{1}, \cdots , \alpha_{n}c_{1}, \cdots ,c_{n} を代数的数(超越数でない数)とする. このとき, \displaystyle \sum_{i=1}^{n} c_{i} e^{\alpha_{i}} \not = 0

 

 \tan{1}が代数的数と仮定すると, 

\tan{1}=\displaystyle \frac{e^{i}-e^{-i}}{i(e^{i}+e^{-i})} であるので, 

 (i\tan{1}-1)e^{i}+(i \tan{1} +1)e^{-i}=0 となり, 

 i\tan{1}-1, i \tan{1} +1 が代数的数である*1ことから矛盾.

したがって\tan{1}超越数である. □

 

*1:代数的数全体の集合は通常の演算に関して環をなす. すなわち, 代数的数同士を足したり掛けたりしたものは再び代数的数であることが知られている.  

対称式

次の命題はよく知られた事実であり, 「対称式の基本定理」と呼ばれる. 

定理
対称式は基本対称式の多項式で一意的に表せる.

(注意:ここでいう「対称式」とは, 不定元同士を入れ替えても変わらない多項式のことをいう. したがって x^{y}+y^{x} は対称式ではない.)

証明は多項式に次数に関する辞書式順序を定義して, その順序について帰納法で示すことができる. 

 

 この定理からどのような対称式も基本対称式の多項式で表せるわけだが, 対称式が具体的にどのような基本対称式の多項式で書けるのかを調べる.

入試問題で本当に具体的な2次, 3次の対称式についての計算はあるが, 次のような一般の n 次対称式を基本対称式の多項式で表すような問題はあまり見ないと思う. 

問:対称式 x^{n}+x^{n-1}y+\dots +xy^{n-1}+y^{n} を基本対称式  x+y, xy多項式で表せ.

解答:

s:=x+y , t:=xy とする. f_{n}(s, t):=\displaystyle \sum_{i+2j=n}(-1)^{j} {}_{i+j} \mathrm{C} _j \, s^{\, i} \, t^{\, j}とおく. (i, jは非負整数)

x^{n}+x^{n-1}y+\dots +xy^{n-1}+y^{n}=f(s, t) であることを数学的帰納法を用いて示す.

n=1,2 のときはOK.

[n, n+1 のときもOKだと仮定する. ]

\displaystyle \frac{x^{n+1}-y^{n+1}}{x-y}=x^{n}+x^{n-1}y+\dots +xy^{n-1}+y^{n}であることに注意すればx^{n+2}-y^{n+2}=(x+y)(x^{n+1}-y^{n+1})-xy(x^{n}-y^{n})から

関係式  f_{n+2}(s, t)=sf_{n+1}(s, t)-tf_{n}(s, t) を得る. 

この関係式から, f_{n+2}(s, t)s^{\, i} t^{\, j}の係数は  (-1)^{j} {}_{i+j-1} \mathrm{C} _{j-1}-(-1)^{j-1} {}_{i+j-2} \mathrm{C} _{j-1}=(-1)^{j} {}_{i+j} \mathrm{C} _{j}を得る.

ただし, 式変形でパスカルの三角形の関係 {}_{n} \mathrm{C} _{r}+{}_{n} \mathrm{C} _{r+1}={}_{n+1} \mathrm{C} _{r+1}を使った. □

 

 

参考文献

m変数のn乗和を基本対称式で表してるpdfがあります.

http://nadamath2012.web.fc2.com/bushi/2012_sigma.pdf